患者さんの声(9)

「お風呂の後に注射」が生活のリズムです

(Aちゃん(仮名)5歳 とお父さん、お母さん)
軟骨異栄養症(軟骨無形成症)
主治医:北岡 太一先生
大阪大学 大学院医学系研究科 小児科学

掲載記事の内容は、1人の患者さん・ご家族の体験談であり、
すべての患者さんに同じ効果を示すわけではありません。

成長ホルモン治療を始めたころのことを教えてください。

お父さん:病気のことや成長ホルモン治療のことは、生まれる時に先生から聞いていたので、他のお子さんと身長の差が開かないうちに始めたいと思っていました。治療開始可能な年齢など、治療が受けられる基準を満たすのを待ち、Aが4歳のときに始めました。

成長ホルモン治療は在宅で注射を行う治療法です。その点はいかがでしたか?

お父さん:自分で注射をするという経験はなかったので、抵抗はありましたが、治療を始めようという思いは変わりませんでした。

注射のやり方はすぐにわかりましたか?

お父さん:看護師さんが注射器の見本を使って実演し、細かく教えてくれました。最初はすごく太い針をイメージしていたのですが、実物はシャープペンシルのように細かったので、「慣れればできそうだ」と安心感がありました。

Aちゃんに注射するのはどなたですか?

お母さん:初めのころは主人でしたが、今は私の方が多いです。わが子に注射をすることに罪悪感がありましたが、主人から「そう思いながら注射をすると、本人に伝わるから」と言われ、気持ちを前向きに切り替えました。経験を重ねないとうまくならないという気持ちもありました。

 

お父さん:1回目は僕でしたね。僕も慣れたいと、最初はいろいろと工夫していました。子どもが寝た後に打ったら、針を刺した瞬間に泣き出したこともありました。本人としては「不意打ちで注射されるくらいなら、(起きているうちに)早めに打ってもらった方がいい」と思ったのかもしれません。
 その後、風呂上がりに打つようになり、左右の腕、左右の太ももから1カ所というサイクルで毎日注射しています。

注射を毎日続けるために何か工夫をされていますか?

お父さん:始めてから約2年になりますが、注射が生活の一部に溶け込み、もう良い意味で意識が薄れています。
 「風呂から上がったら、すぐ注射」。
 僕にとっても、Aにとってもそれが生活の流れで、たまに遅れると、本人の方から聞いてくるくらいです。

最近のお子さんの様子はどうですか?

お母さん:精神的に強くなったと思います。病院で採血をする時も、「さあ、どうぞ」とばかりに自分から腕を出します。痛いとも言いませんし、泣かなかったねと看護師さんから褒められても、本人は「当たり前」といった様子です。

 

お父さん:幼稚園で他の子よりも身長が低いことを認識し始めて、なぜ自分は小さいのか、聞いてくるようになりました。「Aはみんなよりゆっくり成長するんだよ。みんなが一緒でなくていい、大きい子や小さい子、人それぞれでいいんだよ」と話しています。
 このように病気は病気として受け止めさせる一方、姉や妹と同じように接し、病気を言い訳にさせないように意識しています。姉も妹も、Aとは楽しそうにけんかをしています。

成長ホルモン治療をどのように受け止めていますか?

お父さん:他の子よりも走れない、運動ができないことにもどかしさを感じているのを見ると、「何とかしてあげたい」という気持ちがだんだん出てきました。
 成人したときに生活に不便がないくらいまで成長するように、いろいろと情報を収集して、できる限りのことはしてあげたい。その手段として、成長ホルモン治療を継続しているということです。

普段の生活で気をつけていることはありますか?

お父さん:首の骨に負担がかからないように、遊びの方法を考えています。それ以外は制限せず、何かをやって足などに痛みがあれば、次からは控えるようにします。

 

お母さん:首に負担がかかる「でんぐり返し」と「後ろ回り」はさせないように、幼稚園側にもはっきりお伝えしていますが……それくらいですかね。

Aちゃんが、いま一番興味あることは何ですか?

お父さん:ディズニープリンセスに夢中です。今年の大型連休には家族旅行でテーマパークに行きました。

 

お母さん:お城を見た時の、“顔のいろいろな穴が一度に開いたような”表情は忘れられません。連れてきてよかったと思いました。

同じ病気のお子さんを持つ方に一言お願いします。

お父さん:悲観的にならなくてもよいのでは、と思います。身長を個性と受け止め、医学の進歩を信頼し、受けられる治療法があれば利用するように努める――。そうすることで自分の気持ちも報われる、と思っていただきたいです。
 私も、初めて病気のことを聞いた時は「なぜわが子が」などと考えましたが、「この病気が存在する以上、どこかの親御さんは同じ思いをしているわけで、それがたまたま自分だった」と受け止めるようになりました。

 

お母さん:同じ病気のご家族とSNSで交流があり、生活のこと、治療のこと、福祉制度の情報などを共有しています。生まれたばかりのお子さんのことでメッセージをいただいたときは、「私も同じような悩みを持っていましたが、子どもは日々成長しています」と返信しました。
 この記事を読んでいる親御さんには、「かわいい時期が長いと思って、私はちょっと得した気分です!」とお伝えしたいですね。

先生からのメッセージ

足の痛みなどを感じながらも幼稚園で元気に過ごされている様子を外来で伺います。いつも前向きに頑張られているのは、ポジティブに捉えられるようにサポートされているご両親の思いが伝わっているのでしょうね。これからも自分のペースを大切に日々を送っていただきたいと思います。

JP23GH00057

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