患者さんの声(2)


毎日普通に学校に通えて友達と過ごせるのが幸せ
(仮名 Mさん(中3)とお母さんのYさん)

監修:安達 昌功先生
神奈川県立こども医療センター


-脳腫瘍を発症したときのことを教えてください。

Mさん: 私は小学1年生のとき(2002年)に頭葢咽頭腫という脳腫瘍を発症しました。頭痛と吐き気がひどかったので病院で診てもらったのですが、症状 を話しても、風邪と言われて風邪薬を飲んでいました。でも全然よくならなくて、3カ所目の病院で紹介された大学病院で検査をしてもらいました。その帰り 道、車を運転していたお母さんが泣いていたのを今でもはっきりと覚えています。 その日、家に帰っても頭痛がひどくて、神奈川県立こども医療センターに救急車で運ばれ、そのまま入院することになりました。頭にボルトを付けている子や見 たこともない器械を付けている赤ちゃんがいたりして、最初はすごく怖かったです。何度も手術をしましたが、周りの子ががんばっているのを見て、私も勇気づ けられて、手術を乗り越えることができました。

 

-手術後、現在までどのような治療をしてきたのでしょうか? 成長ホルモン治療を始めるにあたって不安に思ったことは?

Mさん: 下垂体を摘出したので、下垂体で作られるすべてのホルモンを補充しています。幸い、視野の障害はありません。成長ホルモンは手術後1年3カ月ほ ど経った2004年3月頃から始めましたが、最初は注射をするときにどれくらい痛いのかわからなくて不安でしたが、今はほとんど痛みを感じないので不安は なくなりました。小学生のときはずっとお母さんに注射をしてもらっていましたが、1回自分で注射してみたら簡単にできたので、中学生になってからは自分で 寝る直前に注射をしています。



-成長ホルモン治療を始めて変わったと感じるところはありますか? またそれ以外の治療で苦労されたことは?

Mさん: 病院で3カ月に1度、身長を測っていますが、毎回1~2cmずつ伸びているので、それは成長ホルモン治療のおかげだと思います。今、身長は 163cmです。以前は1日に0.7mgでしたが、今は代謝のために0.3mgを注射しています。下垂体を摘出したため尿崩症(抗利尿ホルモン分泌異常 症)になりました。そのため外出するときはいつもお茶と尿崩症の薬を持参しています。授業中はお茶を飲めないので、特に夏は水分の調節に苦労しています。



-お使いの成長ホルモン製剤については?

Mさん: 以前使っていた薬は本体があって製剤を付け替えるタイプでした。そのつどアルコール消毒をして付け替えなければいけないので面倒でしたが、いま 使っている成長ホルモンは使い切りタイプで手間も時間もかからないのでとても便利です。今、自分で注射できるのもこのおかげです。携帯にも便利で外出先で 万一、置き忘れても家に予備があるという安心感もあります。



-小児脳腫瘍の会の親睦会に参加した感想は?

Mさん: 私が通っている中学校には私と同じ病気の子は一人もいないので、親睦会などで同じ病気の子との交流は辛いことなんかを共感し合えて私の力強い味 方になってくれるのがうれしいです。キャンプで泊ったときも子どもだけ同じ部屋で寝ました。みんな同じような薬を使っているし、親がいなくてもなんの心配 もなく楽しく過ごせてよかったです。



-今、中学校で生徒会の副会長をしているそうですが、将来の夢は?

Mさん: 発症したときは不安だらけの毎日でしたが、今は病気のことを気にしないで日常生活を送れて楽しい思いでいっぱいです。病気になったときは勉強が 遅れるのが嫌で、学校を休むのも嫌で仕方がなかったのですが、今は体調もよく毎日普通に学校に通えて、友だちと楽しく話したりできているので、幸せです。
将来の夢は、入院していたときの看護師さんがとてもやさしく、おもしろい人で憧れていたので、看護師になりたいと思いました。でも私は患者さんの痛々しい 姿を見たり、血を見たりするのが苦手なので、今は院内学級の先生もいいなと思っています。



脳腫瘍と闘うこどもたちと家族を応援したい。
「小児脳腫瘍の会」

2002年9月に神奈川県立こども医療センターの院内患者会として発足 し、現在は神奈川県を中心に小児脳腫瘍に関係する先生の講演会を開催したり、キャンプなどの親睦会を開いたりしています。現在、活動している会員は60名 余、会のホームページに登録している人は全国で370人余います。ホームページには「GH治療を始めて心も体も前向きになった」というお便りのほか、「病 院や先生によってGH製剤の補充量がまちまちなので、どの病院でも十分な治療を受けられるようにしてほしい」といった声も寄せられています。小児脳腫瘍の 会では、この病気の治療内容をわかりやすく説明した絵本を2冊出版しています。2006年2月に小学校高学年を対象にした『あなたの病気』を発行、 2010年9月には幼児向けの『じゃまじゃまジャマゴン』を出版しています。希望者に配布が可能ですので、詳しくは小児脳腫瘍の会のホームページ (WWW.pbtn.jp/)をご覧ください。
 

(ご家族の許可を頂いて掲載しております)

Mさんの主治医の安達先生にコメントをいただきました。
「ものしずか」な私は、いつも元気なお母さんとの会話に忙しく、「ひとみしり」のMちゃんとあまりお話しできないのですが、今度のインタビューで、Mちゃ んが普段から毎日を真剣に過ごしていることを知り、この10年間で1番くらいに、猛烈に感動しました。
また、こどもの記憶力・理解力の深さにも驚きました。普段適当に生きている自分を反省しつつ、今回の企画にご参加いただいたご家族に心から御礼申し上げます。

安達 昌功先生
神奈川県立こども医療センター

JP/NT/0618/0188